自家採取水槽のシーズナルパターンについて(タイドプール再現に向けての土台作り)

生物ろ過について
冬季の自家採取海藻水槽・・・イソモク、カニノテがメインに変化します

盛夏にベントスクラウドで強化した水槽はデトリタスの蓄積も早く、初冬は水槽をリセットして来春のタイドプール再現に向けた土台作りとなります

ベントスクラウドは効果も高いが・・・デトリタス(汚泥)蓄積も早い⇒初冬はリセットの時期

  • 盛夏にライブサンドを強化した水槽も2~3ケ月経過すると微生物叢(プランクトン、ネクトン、ベントス等豊富な生物群)に変化が現れます。
    特に紅藻等海藻類を豊富に入れた場合は、海藻類に付着、棲息していたプランクトンも徐々に死滅しデトリタス(汚泥=有機物)として底砂に蓄積し底砂に生息しているベントス(主にワーム類)や好気性菌、嫌気性菌の処理能力を次第に超えるようになり「生物サイクル」「微生物ループ」が効率的に回らなくなります。

    底砂を厚めに敷いたりライブロックを導入しても、微生物層のバランスは徐々に劣化して・・・ 
    エビ、カニ等 >  プランクトン > ベントス >> 好気性菌等菌類 となり「微生物ループ」が崩れて水質が劣化し易くなります。

    ※ ベントスクラウド導入した趣旨やメカニズムは以下の過去プログを参照してください。
    ⇒ 生物ろ過強化水槽とメンテ
    ⇒ 盛夏こそベントスクラウドを活用した夏バテ防止策

    ※ 生物ろ過全般のメカニズムは以下の過去ブログを参照にして下さい。
    ⇒ 小型水槽の組み立てについて(基礎~メンテ)


    ※ 盛夏にベントスクラウドを導入⇒ 質の高いライブサンドを作る・・・これが水質浄化システムの強化の目的となります。 但し、この方法は デトリタスの蓄積も高いので一度 水槽内のリセットが必要となります。
  • リセットの目安としては・・・
    キラキラした水質が部分換水程度では復活しない
    ⇒ 水槽内の「微生物ループ」が崩れている
    ※ ここで、水質指標( Tetra Marine Testでの亜硝酸値等)を提示していないのには理由があります。これらの指標が変化した時は大抵手遅れとなります。

    詳しくは、過去の投稿を参照してください。
    ⇒ 海藻主体の小型水槽の楽しみ方(SEA-BONSAI)

    ②紅藻にスラッジ、デトリタスが付着しやすくなる、紅藻類の葉先が溶出しだす
    ⇒ 水槽内が富栄養価し、好気性菌類等水質浄化菌では硝化しきれない
    ③コポペーダ、ヨコエビ等プランクトンが見られずエビ、カニ類のみの生物叢となっている
    ⇒ 水槽内の微生物バランスが崩れている
    ④ライブロック、底砂にデトリタスの蓄積が認められ、水槽面やライブロック、底砂に茶ゴケ等褐藻類が付きだすまた、ライブロックを持ち上げると細かい砂状に崩れる  
    ⇒ 水槽内のバランスが崩れ富栄養価が進んでいる
    ⑥供給、吐出ホースに茶ゴケ類が認められる 
    ⇒ 2213内の「ろ材コンテナ」にデトリタスの蓄積が認められ「ろ材」の共洗い等手当が必要
  • リセットの範囲

    今回の様にベントス等を導入した場合はデトリタスの蓄積も多く、ライブロックも導入して6月程度経過するとどうしても活着していた石灰藻も弱くなり一部崩落し出すので交換が必要となります。下の写真は水を全量抜いた後の状態です。水槽内全体にデトリタスが溜まっているのが判ります。

  • 水槽内の水を抜いた状態:
    底砂全体にデトリタス、スラッジが多量に表層に蓄積しているのが判ります。青印は盛夏に導入したベントスクラウドの残骸です。ベントスクラウドは海綿が主体の函体の為、棲息していたプランクトン等の原生生物が死滅した後はスポンジ状の函体だけが残ります。
  • 底砂の状態を見ると表層全体、広範囲に認められ底部までデトリタスが蓄積している可能性があります。
  • これらの状態からは・・・少なくとも底砂の洗浄、全換水が必須となります。
  • 但し、ベントスクラウドを導入した目的は活発なプランクトン、ベントスの活動による水質浄化システムの強化ですから・・・底砂の洗浄、2213ろ材コンテナの洗浄程度に止め、底面ろ過フィルター周りは触らない方が賢明です。

ベントスクラウド導入後の水槽リセットについて(注意点と目的)

  • 水槽リセットの注意点と目的
    ①水槽内の過剰デトリタスの除去
    ②脆弱化した水槽内の「生物サイクル」「微生物ループ」の賦活化
    ・・・となります。
    具体的には・・・
    ・あくまで、過剰デトリタスの除去となりますので底砂の軽い共洗いとデトリタスの除去に止めます。(6ケ月以上長期に同一サンドを畜養していた場合は水道水でも問題ありません。私の水槽ではホースから直接入れて軽く底砂をかき回しながら硬くなった砂をほぐして排出しています。この程度では畜養した生物群は死滅しません⇒これは底面フィルターに使用している8Dマットや底面フィルターを覆っている不織布に豊富な微生物が棲息しているからです。
     ※これらの詳細については、過去の投稿を参照にして下さい。
    ⇒ 外部水槽-1(エーハイム 2213と3541で作る小型水槽)

     盛夏等に海藻やベントスクラウドを水槽に導入したのは「底砂」にベントス、好気性菌や嫌気性菌を豊富に生息させライブサンド強化を図るための手段です。よって、底砂洗い等に止め「底面フィルター」周りには手を付けない事です。せっかく畜養、訓育した微生物群や好気性菌類が死滅して水質浄化システム自体が作用しなくなります。

    ・「生物サイクル」「微生物ループ」の賦活化には、どうしても 自家採取の天然海水、豊富にプランクトンが付着、棲息している自家採取海藻を水槽に導入する必要が有ります。
    これらの自家採取海藻、海水には豊富な生物叢(プランクトン、ベントス、ネクトン等微生物や好気性菌、嫌気性菌類)が含まれており水槽内にタイドプールを再現する場合は必須アイテムとなります。
     ※詳しくは、過去投稿に詳述しているので参考にして下さい。
      ⇒ 小型水槽で大切な3要素(タイドプール再現まであと一歩)

     また、導入に当たっては、以下の書籍に目を通して置くとより知識に厚みが出ると思います。
    ⇒  プランクトン図鑑  岩国市立ミクロ生物館監修 共立出版
  • まとめると・・・
    ①水槽内の全換水と合わせて底砂の軽めの洗浄
    ②外部フィルター2213のろ材コンテナの洗浄およびろ材一部のライブサンドへの変更
    ③ライブロックの全替え
    ④自家採取 天然海水、海藻の水槽導入
    となります。

晩秋~初冬採取海藻、プランクトンのシーズナルパターンについて

  • 晩秋~初冬の海、磯は外気温も20℃を割り相当肌寒い時期となります。 しかし海の中は海水温も三崎周りでも21~22℃と11月初旬でもまだまだ初夏程度の海水温です。盛夏では長井沖では26℃にもなりますので盛夏に比べると低下していますが頑張れば入磯は出来ます。
    しかし、海藻やエビ類プランクトン類は10月程度から徐々に減少し11月ともなると・・・海に生命感はほぼありません。イソスジエビの幼体がやっと見つけられる程度となります。
  • 海藻の種類も・・・晩春~夏場は豊富に繁茂していた紅藻類マクサ、オバクサ、各種トサカや緑藻類モク等や綺麗なシワヤハズ等も姿を消し褐藻のモク類やカニノテ等が少しある程度となります。
  • しかし、これらにもプランクトンが夏場とは程遠い量ですが付着、棲息しており水槽内に導入は必須となります。特に根元付近にはわずかでもベントス類も棲息しているので採取しています。

初冬の海藻主体水槽のセットについて・・・初春のタイドプール仕上げに向けて

  • 水槽セットの基本的な考え方に変更はありませんが、自家採取海藻水槽としてはシーズナルパターンがあります。夏季では海藻の種類も豊富(紅藻、緑藻、褐藻)で付着しているプランクトンも多種多様(カイアシ類、ワレカラ、ヨコエビ等や根元にはワーム類も容易に採取出来る)ですが冬季ともなるとワレカレ等は皆無となりヨコエビ類の捕集は難しくなります。
    よって、海藻類の対水槽容量も盛期の5%程度から1%程度となります。私の水槽は無加温水槽ですので水温は室温に連動しますので、この時期であれば 13~20℃程度で推移するので海藻水槽としては盛夏よりは管理が容易となります(換水頻度の減ります)
  • セットとしては・・水槽容量 約40L エーハイム 2213外部 3541連底面フィルター連結 無加温
    常時エアレーション
    ①「ろ過面積・ろ材量/水槽容量」=40~45%以上
    ②  導入海藻 対水槽容量 = 1%程度
    ③ ライブロック 約6Kg 底砂 約11~12L

    ※ セットの基本的な考え方は過去の投稿に詳述しているので参考にしてください。
     ⇒ 盛夏こそ小型水槽にタイドプールを作れ(SEA-BONSAI 2)

    今回も、ライブロックはジェイズアクアリウムさんのライブロックを使用しています。
     ⇒ ジェイズアクアリウムHP
  • レイアウトの概要
    ①今回は繊維状の連結器を持つイソモクが採取出来たので下の写真の様に水中ボンドを使用してライブロックに固定してレイアウトしました。 連結器を持つ褐藻類はこのように固定するとよりタイドプールらしさを表現出来ると思います。
    ②ライブロックについては、一つ一つ見て付着生物やホヤ、ソフトコーラルがついている事もあるので注意しながら配置して行きます。
    ③ライブロックは活着している石灰藻が水質浄化をするバイオフィルムを形成しています。この石灰藻に水流、光量が充分当たる様に配置します。 下の写真の様に必ず隙間を作って水流が満遍なく水槽全体に回る様にします。そして、一度配置したライブロックはなるべく移動しない様にしてください⇒ライブロックは生き物と同様ですので頻繁に移動は厳禁です。
  • 冬季は、じっくり水槽内に生物叢(プランクトンや底砂の好気性菌、嫌気性菌)を育てライブサンドに定着、繁殖させ水槽内で訓育する時期です、これらの土台を作っておけば早春~初夏に生き生きとした海になった時採取した海藻で本格的に好きな海藻を採取して本格的なSEA-BONSAIを水槽で再現出来る事となります。
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