盛夏こそ小型水槽にタイドプールを作れ(SEA-BONSAI 2)

小型海水水槽
セイカタを元気よく捕食してくれるコウワンミノウミウシ。

 盛夏は採取も楽しくタイドプール作成、再現も容易な時期ですが・・・長期飼育には小型水槽ならではの管理にコツがあります。今回は夏季管理法と新規立ち上げを中心に解説します

楽しく採取した海藻、海草を使ってタイドプール(SEA-BONSAI)を作れ

  • 今回は・・・ライブロックも入れ替えて夏季新規立ちあげの解説です。

    私の小型水槽は「生物ろ過」をより強化したシステムで構成しています。・・・詳細は過去のブログを参照してください。
    ※ クリックしてください・・・ 小型水槽の最適なシステムと理論
                     生物ろ過を支える3要素

    この「生物ろ過」強化の小型水槽で立ち上げると・・・以下の様に「キラキラ」とした透明な海水を作る事が出来ます。今回は7月初旬に三浦半島で採取したヨコエビ等プランクトンを豊富に含む紅藻と海綿(ダイダイイソカイメン)を水槽に導入し採取海水で立ち上げています。
    この時期良い緑藻が手に入りにくかったので・・・今回はライブロック、海草もショップより購入しています。

    特に、ライブロックは小型水槽に限らず、どうしても石灰藻が消滅したりライブロック自体が崩れてきますので(持ち上げた時に細かい砂が出るようだとそろそろ寿命と言えます)定期的な入れ替えが必要となります。

    今回、購入したのは・・・・
    ライブロック・・・私が良く購入する、ジェイズアクアリウムさん。HPを張り付けておきます(良質なライブロックを提供してくれます)
      ⇒   ジェイズアクアリウムさん

    海草(ヘライワヅタ)は 老舗のシュリンプさんで購入しました。プランクトン、ベントスも販売されており、HPでの「生物ろ過」周りの知見は一読する必要があります。 また1.023worldさんのHPも生物ろ過強化とは方向性がやや違いますが海水水槽に興味のある方は目を通すと良いでしょう。

      ⇒  天然海水、プランクトンの老舗 シュリンプさん
  • 今回採取した海藻や海草(ヘライワヅタ)は以下になります・・・

紅藻ーツノムカデには豊富にヨツハモガニが付着しています。プランクトンを含む豊富な生物叢が手に入るのも自家採取の楽しいところです。

  • 水槽立ち上げスペック

    具体的なスペックと立ち上げ、生物ろ過から見た水槽容量/ろ材量/海藻を含む生物叢の目安量や比率については・・・過去ブログを参照してください。
       ⇒ 小型水槽に最適なシステム 

    ⇒ ※ 「ろ過面積・ろ材量/ 水槽容量」の指標に注目し 35~40%程度↑ を目安として組み立てています。

    ① 今回のろ過システム

    ろ過フィルター関係: エーハイム2213、3541連結
    照明   : 水作ライトアップ400×2基(11w☓2)⇒夏季は水温上昇を考慮して水草専用は使用しません
    海水:      自家採取天然海水        水槽容量約38L+ 3L(2213タンク容量分)
    ライブロック:  ジェイズアクアリウム      約6kg
    ライブサンド:  前回水槽継続使用(2M使用継続) 約11.3L+2213タンク分 ろ材2L

     ろ過面積・ろ材送料/水槽容量= 6+2+11.3/41=47%・・・目安量40%程度はクリヤー ⇒ ※夏季は目安量は高め、導入生物叢少な目にしてろ過強化しています。

    ② 生物叢と水槽容量との関係
    今回使用した海藻は400gで約1%、海綿は約100g程度、イソスジエビ、フジツボ、イガイ等は入れていませんので生物叢の導入量は1%程度と抑え気味としています。
    ⇒ ※ 夏季は水温上昇も大きく水質低下傾向となりますので、酸素不足に敏感なイガイ、フジツボ類、イソエビ類は導入していません。特にイソエビ類は酸素不足に弱いのでせいぜい2~3匹程度として導入は控えるのが賢明と言えます。

    ③エアレーションについて
    夏季は水温管理が厳しく水槽用クーラー無しでは水温が26度程度にはなります。三浦半島小田和湾では沖合でも26度程度までには上がりますが・・・この程度が限度と言えます(私の場合は室内クーラー使用として水槽温度は26~27度となっています)
    このため、エアレーションは常時入れておくべきです。   

豊富なプランクトンと生物ろ過について

  • 下に表示したのが・・・7月初旬、三浦半島に海藻、海水採取時に海藻や砂に付着、棲息していたプランクトン達です。
    表記に際しては・・・以下の書籍を参照して行いました。

    ベントス関係:    海岸動物の生態学入門 日本ベントス学会編  海文堂
    プランクトン関係:  プランクトン図鑑 岩国市立ミクロ生物館監修 共立出版 
  • 夏季の自家採取はプランクトンの活性も高く、水温も高いので磯遊びを兼ねて採取には良い時期と言えます(私の場合は海藻種類も多くコシモガリモエビ、ワレカラも含めて意外と豊富な種類が手に入る春先~初夏にかけてが好きです・・・但し水温は14~16℃と低いので採取自体はつらいものがあります)
    特に、ベントス関係は潮間帯の砂や海藻の根元で見つかり易いので採取には良い時期となります。
    また、港の壁に貼り付いている灰色泥(特にダイダイカイメンが張り出しているものが良い)は微生物の宝庫ですので・・・水槽へのカンフル剤として導入すると水質改善効果があります。
  • 採取した海藻類については・・・バケツ等に入れてエアレーションさえ継続していれば・・・2日~3日程度は付着していたプランクトン、ベントス、ネクトン類は生存しています。夏季でも7日程度、種類は限られますが充分水質改善用のプランクトン添加材として有効に活用できます。

    下の写真は、 採取後エアレーションして5日程度室内保管した海藻に付着していたプランクトンです。どうしてもワレカラやカイアシ類などは落ちやすいようですが、それ以外は元気に活動しています。

夏季小型水槽の管理と注意点

  • 小型水槽、管理上の注意点・・・

    先ず初めに、自家採取物の扱いなどが夏季については・・・少しシビアに対応する必要が有ります・・・
    ① 自家採取に伴う「厄介者」セイタカイソギンチャクについて
    夏季小型水槽に限らず、自家採取の海藻類には・・・セイタカイソギンチャク等水槽の嫌われ者がどうしても混入する事は避けられません。特に夏季は生物叢の活性、繁殖力も高くなります。しかし、当然自然では特定の生物だけが繁殖する事は無く捕食者がいます。セイタカイソギンチャクの場合はミノウミウシ類の一部が捕食者となります。
    私の場合は、海藻類は株単位で根元(ベントス類も同時に採取出来ます)から採取しているので捕食者も同時に採取出来る場合があります・・・下の写真の様にセイタカとミノウミウシを同時に採取出来れば自ずと水槽内でバランスが取れる事となります
    ツノマタ系の紅藻は高い確率でセイタカイソギンチャクが付きます、あまり増えるようなら付着している紅藻を株毎入れ替えてしまうようにしてください。

    ※表記している海藻類の同定には以下の書籍を参照しています・・・
      海藻 日本で見られる388種 神谷充伸監修 誠文堂新光社
  • 下の写真は、コウワンミノウミウシがツノムカデ(紅藻)に活着していたセイタカイソギンチャクを葉先を移動しながら見つけて捕食しているものです。・・・捕食時間は2~3分程度で意外と素早く絡みついて齧りながら捕食していました。

② 自家採取した「ダイダイイソカイメン」の設置と注意点
 海綿類は自家採取しやすく「生物サイクル」「微生物ループ」を回すには最適なアイテムです。機会が有れば水槽導入すべきと考えます。
但し、採取する場合は塊が大きい方が水槽内で定着、活着が良いようです。大きめにザックリと切り取るのが良いと思います。また、水槽内に設置する場合はライブロックや底砂に固定すると良いでしょう。活着や定着には適度な水流が当たる様にしてください。
海綿は夏季には・・・活着状況が悪かったり水質が良くない場合は「カビ」が発生し易く海綿が腐りだしますので注意が必要です。

この場合の処置について以下に説明します・・・

③夏季小型水槽の管理について・・・

夏季は水温がどうしても高く・・・水槽容量が少ない小型水槽ではより水質悪化になり易い時期となります。この時期は「生物ろ過」が良く回っているかを、慎重に見極めて早めの手当を心掛ける必要があります。
前回の投稿でも述べましたが指示薬での水質チェックでは・・・亜硝酸値でさえ明確な換水タイミングは測りかねます。むしろ水槽内の生物叢変化や海水の「キラキラ度」の方がより実際的でしょう。

①小型水槽の夏季(水温25度↑)管理として基本は・・・あくまで「生物ろ過」重視と言う事です。豊富なプランクトン、ろ過細菌が活発に活動し「生物サイクル」「微生物ループ」が健全に回る事を担保する事と言えます。
よって、夏季は・・・「ろ過面積・ろ材量/ 水槽容量」の指標に注目し 40%~45%程度↑とし導入する生物叢は全体として1%↓に抑える。但し、豊富な生物叢は維持して 紅藻、石灰藻(ライブロック)、海綿、出来れば直接ライブサンドから硝酸塩や有機物を摂取する海草を入れる。減らすものとしては高水温、低酸素に弱いイソスジエビ、イガイ、フジツボ等は減らす。魚類は稚魚等であれば数匹程度は良いと思います。(過剰なプランクトン捕食者として)

②高水温、低酸素対策として・・・エアレレーションは常時行う。蒸発が多くなるので比重計で1.023から離れる場合は差し水を随時行う。ほぼ毎日実施となります。

③夏季は、生物叢の偏りが激しくなり水槽内の生物バランスが崩れやすくなります。水質が合う生物叢は繁殖力も高く水質変化に弱いものは極端に死滅してその期間、インターバルが通常より短くなり、嫌気性生物群が増えます。⇒ 生物叢のバランスが崩れて水質は悪化傾向となります(特にワレカラやヨコエビの飼育期間が短くなり、底生生物群は種によっては長くなります)
これらの変化が速いと言う事です⇒※よって、換水やプランクトン等の追加処置も早めに行う必要があります。
(前項で海綿に生えたカビの処置を説明しましたが、このような兆候を捉えて早めな処置が必要となります)

管理上のコツ・・・

1.水槽内の小さな変化を見逃さない
自家採取の海藻には稚貝が豊富に付着しています、これらの稚貝が海面上に這い出してきた ⇒ 水槽内の酸素不足の兆候です。 ※エアレーションを強めるか、そもそも稚貝が過剰なので数を調整してください。

水槽面に頻繁に発生していたプランクトン(ケンミジンコ類)が、見られなくなった。 ⇒ 水槽内の微生物バランスが崩れ始めた兆候です。自家採取のプランクトン添加、天然海水での換水タイミングと言えます。

2.換水やプランクトン添加は、早めに行う
自家採取海藻を使った小型水槽では、夏季はどうしても「水質変動」が速くなります。水素内の微かな変化を捉えて早めに換水を行う必要があります。

私の場合は、海藻採取時に、天然海水も採取しています。(30Lポリタンク☓1基 20Lポリタンク☓2基)

過去のブログで・・・自家採取の詳細を解説しているので参照してください。 ⇒
自家採取の実際-小型水槽で大切な3要素 

※ この天然海水や自家採取時の海藻をバケツ等に入れエアレーションして置くと「換水」や「水質改善プランクトン添加」として使用する事が出来ます。

私の場合は・・・立ち上げ当初の「キラキラ」した透明な海水から透明度が落ち始めた時には換水するようにしています。概ね1回/10日程度のインターバルと思います。

ダイダイイソカイメンは、底砂とライブロックで固定し2~3日程度ケアしていくと給水部より有機物を盛んに吸収しようとします。有る程度活着した状態となり・・・こうなると落ち着いてカビ等は発生しなくなります。
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