夏は小型水槽の体力強化期間として捉え、ベントスクラウド(ベントス群集)導入とライブサンドの畜養方法、その効果、採取方法を解説
ベントスクラウドを用いた盛夏小型水槽の体力強化策(夏バテ対策)
- 夏場こそ・・・「生物ろ過」を強化して小型水槽の体力強化を図る良い機会と言えます。
具体的には・・・①主に潮間帯等に形成されるベントスクラウド(ベントス群集)⇒ 砂泥、岩礁表面、海藻の隙間等に多毛類、端脚類、植物性プランクトン、動物性プランクトン・・・様々なベントス、プランクトン、ニューストン、ネクトンが群集を作り捕食者を頂点として植食者、濾過食者、分解者などが生態系としてピラミッドを形成します。 ⇒ 私が、小型水槽で、厚めの底砂(ライブサンド)ライブロック、海藻等で再現しようとしている「生物サイクル」「微生物ループ」で作る「生物ろ過強化水槽」⇒ 「小型水槽でタイドプールを再現する」の基本骨格を成す自然のお手本です。
具体的には・・・下の写真の様に自然では普通に見かけるものに「群集」として棲息しています。
これらを、海藻または、汚泥や海綿毎採取して水槽に導入する事となります。特に、海綿等が棲息しているベントスクラウドは意外にも繊維質で編みこまれた様に汚泥を包んでいますので「壊れる」事はありません。
これらの中に微生物が豊富に含まれており、見た目は悪いですが、「水質改善」「ライブサンドの畜養」と割り切って夏場は進んで導入すべきと考えます(ワーム類等は豊富です)
参考文献: 海岸動物の生態学入門 日本ベントス学会編 海文堂


②海藻もこの時期(8月中旬)となると、なかなか海藻の種類も少なくなり水槽レイアウトとしての海藻としての魅力は減りますが水温も高く採取には良い時期ですので、潮間帯の海藻で汚泥や海綿が良く活着している海藻を選んで採取すると良いでしょう。
この時期、宮川では海が荒れるとカジメ類が多くなりますがこれにはあまりプランクトン類も少ないようです。


- ベントスクラウドの効果について・・・
この時期は小型水槽は「夏バテ」し易くなります。⇒ 生物叢が少なくなりプランクトン類も偏り水槽全体の「生物サイクル」「微生物ループ」が脆弱となり、結果として「生物ろ過能力」が弱くなります。
これらの防止は・・・水槽内の生態系ピラミツドの底辺が弱くなってバランスが崩れる事が主因です。
水槽内といえども・・・捕食者、植食者、濾過食者、底辺を支える植物プランクトン、動物プランクトン、分解者である細菌類を形成しています。 これらの底辺であるプランクトン、ベントス類を増やしてやる事がとても大切となります。結果として細菌類をライブサンドやろ材に定着させて「水質改善」されると言う事となります。
下の写真は・・・ベントスクラウドを導入して2日後の水槽の状況です、「キラキラと煌めく水質」となっています。タイドプールが再現されていると思っています。より自然に寄せる、似せるが基本です。
生物ろ過のおさらい・・・過去のブログを参照してください ⇒
生物ろ過を支える3つの土台
小型水槽の組み立てについて
生物ろ過について



具体的なベントスクラウド採取と運搬方法
- 今回は、8月中旬に三浦半島で採取しました。
具体的には・・・
①採取場所の選定・・・潮間帯の岩礁を中心に潮通しの良い場所を選び、ベントスクラウドを形成していそうな・・・汚泥や海綿等が活着している海藻を中心に採取する。出来れば葉先が細い紅藻に汚泥等が塊となって活着しているものであればベスト、根元にもワーム類が棲息しているので塊として採取する事。
漁港の船着き場で海綿が繁茂しているような場所は繊維状に塊を形成しているので海綿を中心に塊毎採取する。





②採取した海藻、ベントスクラウドは・・・必ずエアレーションや保冷剤を入れて溶存酸素量を保つようにして、出来れば一度採取したものでも水温が上昇するので再度、新鮮な海水を入れ替える事をお勧めします。夏場は思ったより水温上昇が速く今回の様にベントスクラウド(汚泥の繊維状の固まり)を採取した場合は・・・棲息している生物叢も多く相当酸素を消費します。
③夏季採取、ベントスクラウド運搬の注意点は・・・以下の2点に尽きます。
※ 徹底した温度管理とエアレーション(磯場での採取でも岩場にパリバケツを置いただけで水温は相当上昇します。時折、新鮮な海水で換水してください・・・海藻を入れておけばプランクトン等は海藻に活着しているので換水時に逃げる事はほぼ有りません)
運搬時は必ず保冷剤を乗せて行って下さい。移動時間が1時間以上かかるようであれば保冷剤は必須となります。
※ ベントスクラウド(群集)は、汚泥や海綿等が海藻に活着して繊維状の固まりを形成しているので目印として塊で解れないものを採取してください。
注意点は以下のブログに詳細に記述しているので参考にしてください ⇒
夏季こそ自家採取で乗り切ろう









ベントスクラウド導入・・・その多彩な生物叢
- ベントスクラウドの導入について・・・
ベントスクラウドを含む海藻等の水槽導入量は通常全海水量の1%程度に抑えていますが、盛夏に生物ろ過強化を目的とした今回の場合は・・・対海水量の2~3%↑として実施しています。 これは今回の目的が生物ろ過を強化しライブサンド畜養が目的となるため敢えて導入量を多くしています。
この点は重要でろ過システム自体のバランスを崩しかねませんのでメリット、デメリットを良く理解する必要があります、おさらいになりますが過去のブログで基本的な考え方を詳細に記述したものがありますから参考としてください ⇒
小型水槽に最適なろ過システムとメンテ
この量を導入するとエアレーションは終日必須であり、各生物叢の状況(ガラス面へのカイアシ類の湧き具合、海藻の状況、海綿の状況など細かく見ていく必要がある)を細かく見て換水等の対応が必要となります。






- ベントスクラウド内のプランクトン、ベントス等微生物群
下の写真は、ベントスクラウドや海藻から出で来たプランクトン、ベントス、ニューストン等です。相当量の生物叢が棲息しているのが判ります。
顕微鏡写真でもカイアシ類、ワームなどのベントス等が確認できます。
同定には以下の書籍を参照しています
プランクトン図鑑 岩国市ミクロ生物館監修 共立出版






