夏季に体力強化してライブサンドのろ過細菌も馴育されいますが、同時にデトリタスも蓄積しています。具体的な生物ろ過強化水槽のメンテについて詳細に解説
夏季にベントスクラウドを中心に体力強化した水槽の姿
- 夏季は前回説明した様に「生物ろ過」を強化して・・・体力増強にはベストなシーズンとなります。なにより生物叢(ベントス、プランクトン、ネクトン等)が豊富で水温により高活性となっています。
但し、エアレーションが必須となります。高活性⇒酸素消費量も多くなります。水槽内にベントスクラウドを導入するという事は・・・自然の「活性汚泥」を水槽内に導入した事となります。
生物ろ過のおさらいも含めて、ベントスクラウドや活性汚泥等については過去ブログに詳細に解説しているので
参照にして下さい。⇒ 特に、ライブサンド等の使用指標については「小型水槽の組み立てについて」に詳述しています。
小型水槽の組み立てについて(基礎知識~メンテ)
盛夏こそベントスクラウドを活用した夏バテ防止策(生物ろ過強化策)
そして、この「生物ろ過強化策」の目標は・・・底砂=ライブサンドにろ過細菌(好気性菌、嫌気性菌)を含むベントス系生物を棲息、定着させる事となります。 私の場合は・・・45cm(45×28×30)38L水槽に対して9cmの底砂を敷いて 対全海水量の約40%使用してEHEIM3541⇒2213連結の主底面ろ過としているので ライブサンドを如何に訓育、畜養していくかが生物ろ過のキモとなっています。
ライブサンドに豊富な生物群を作って行けば・・・定期的な換水程度で「キラキラ」とした綺麗な水質を保持できる事となります。 2213のろ材コンテナに2,3kgのろ材は使用していますがあくまでも補助的なものと思っています。(水質変動を抑えるバッファー効果)
水質維持は「生物ろ過」「物理ろ過」「化学ろ過」から成り立っていますが、小型水槽にタイドプールを再現する為には「生物ろ過」がほとんどであり「物理ろ過」は精々1割程度、「化学ろ過」は使用しません。
より「自然」に寄せる、似せる事が大切な姿勢と考えています。
前回のベントスクラウド導入は狙い通りの「効果」が有りました。下の写真の様に見た目は悪いですが、「ライブサンドの体力強化」と割り切って海藻も通常であれば・・・全海水量の1%程度に抑えていますが(理由は①付着生物叢が多く発生する有機物も多くなり水質悪化を招きやすい②褐藻、緑藻等葉質から色素溶出が発生し急激に水質悪化を招き易い③光量があれば酸素を放出するが消灯すれば二酸化炭素を放出し酸素不足になり易い)今回は、2~3%と多めに入れました。特に海藻に活着したベントスクラウドが多いため、結果として多くなりました。 - 2週間程経過した水槽の状況は以下の写真となります。 結果としては狙い通り・・・「相当良い」状態となりました。今までは、換水時にレッドシー等人工海水では透明度はあるものの「キラキラ」した煌めく飼育水とはならず「自家採取海水」により煌めく飼育水としていました。 しかし、今回は 人工海水での換水でも煌めく飼育水となりコポペーダ等プランクトンの湧きも良く様々な生物叢(海綿、ワーム、エビの幼生等)が顔を出すようになりました。
水槽内の生態系は捕食者を頂点として植食者、濾過食者、植物プランクトン、動物プランクトン、好気性菌、嫌気性菌とピラミッドを形成して水槽内で「生物サイクル」「微生物ループ」を効率よく廻す事により水質浄化システムが作動するのです。底辺生物はライブサンド全体、ライブロック表面、海藻表面等に形成されるクラウド(生物群)に生息し海水循環を通して水槽内に拡散しています。これらのバランスを適切に維持する事が限られた水槽内では非常に大切です。
底辺の生物群を多くして維持すると言う事です。具体的には、プランクトン、ベントスが多く棲息している状態となります。どうしても経時的に捕食者(魚、エビ、カニ等)が多くなりますが・・・これはバランスが取れていない結果です。あくまでも生態ピラミッドを形成しているので底辺が多ければ水槽内は安定します。








具体的なメンテ方法とライブサンドの訓育、畜養
- ベントスクラウドを投入し、海藻も増量して「生物ろ過強化」をした場合はライブサンドに効率良く豊富な生物群を移植出来てライブサンドの訓育、畜養に効果が有りますが半面デトリタスが蓄積、沈降して行きます。(下の写真を参照)
底砂(ライブサンド)の表面にはヨコエビ類中心とした甲殻類、底砂中にはワーム類を中心としたベントスが棲息し深部には好気性菌、嫌気性菌が棲息、繁殖しています。これらはデトリタス(有機物等)を摂食していますのである程度の量は必要となります。
この底砂では貝類、甲殻類等が捕食者の頂点としてプランクトン、ベントス等植食者、濾過食者が続き底辺に微生物、細菌類がいます。スラッジ、デトリタスを栄養源として・・・ここにも生態系のピラミッドを形作っているのです。これらをむやみに取り除く事は避けねばなりません。
具体的に底砂を含めたメンテの目安としては、デトリタス等が底砂にはっきりと確認出来た上で・・・①ガラス面にカイアシ類等のプランクトンが換水時に湧かなくなった。 ②人工海水での換水でも・・・「キラキラ」とした煌めく飼育水が再現されない。 ③水槽内の生物叢(海藻、プランクトン、ベントス、ニューストン等多様な生物群)に偏りが認められ特定の生物しか観察できない⇒ 具体的には貝類やイソエビ類しか見られなくなる。 ④汚濁水質に弱い生物群にダメージが認められるカイメン、ホヤ等にカビが生えたり溶出する。 ⑤海藻分けても緑藻類の白化が激しく溶出する。・・・・これらの症状が現れた場合は1/2~1/3部分換水(人工海水)しますが、それでも「キラキラ」した煌めく海水が得られない場合は海藻類の清掃、除去も含めた水槽全体のメンテが必要となります。


- 具体的な全面メンテ方法
部分換水でも「キラキラ」した煌めく海水が再現されない場合は・・・水槽全体のメンテが必要となります。特にベントスクラウドを導入した場合はデトリタス、スラッジの蓄積、沈降が速いため前述したタイミングで実施すると良いでしょう。
ここで、大切な事は 水槽内の生態バランスを崩してならない・・・言い換えると上述した状況が見られない場合・・・透明度が有りある程度煌めいている水質の場合は水槽内のバランスが良い状況ですのでみだりに大量換水(全換水)やメンテ等をしないと言う事です。 ⇒ ※水槽内は繊細な微生物バランスで成り立っています。特に底砂に充分な生物群が棲息、繁殖している場合は「生物ろ過力」に任せて「何もしない」が正解です。
①水槽内の状況を把握する
ライブロック、ライブサンドを導入している水槽では、現状をある程度把握しておく必要があります。理由はライブロック等には必ずソフトコーラル、ホヤ、貝類が活着しており、それらは水流には敏感であり変化には弱い事を理解して置く必要があります。言い換えるとライブロックの移動はダメージ覚悟となります。また、緑藻等は光量には敏感ですので配置には配慮が必要です。
これらの対策としては、現状の配置を見ながら海藻類を取り出して観察(付着プランクトン類と種類と量、葉先の白化有無)する。
同時に、海藻を剥がす時もライブロックに活着しているようならそのまま放置する。また、ベントスクラウドを導入した場合は繊維質が絡み合いながら生物群を包摂しているので崩れない場合は無理せず・・・これも放置とします。









②水槽の水を抜く⇒ この水は2213のろ材コンテナ等の洗浄に使うのでバケツ等に取っておく事
下の写真は、海藻を除去した後の水槽内の状況です。 ⇒ この水抜きの状況から 具体的な換水量やライブロックやライブサンドも含めた全メンテが必要か判断して行きます。
今回は、底砂にデトリタス等の蓄積が認められるものの・・・以下の処置とした。
1.吐出ホースへのヘドロ蓄積がある事から2213内のろ材洗浄は必要
2.底砂にデトリタス、スラッジの蓄積はあるものの人工海水での部分換水でキラキラ煌めく水質が復元するのでライブサンドはいじらない(デトリタスが蓄積、沈降しても生物サイクルが良く回っている場合は底砂の洗浄などをすると生物叢自体が死滅したりバランスが崩れるので決して行ってはいけない⇒せいぜいろ材洗浄程度)
3.ベントスクラウド(生物群)周りはいまだ崩れる事なく繊維状に絡まっているので、そのまま放置とする。⇒ この繊維状内に様々な生物群が「生きている」ので決して崩壊させない事。特にガラス面にカイメンが活着し新規に給水管を形成しているのは非常に良い状態と言える。
4.換水量は、ベントスクラウド周りが繊維状に絡まり維持されているのでこの部分は水につけたままとする⇒ 結果として約4/5程度を換水とした。







③2213ろ材コンテナの洗浄
今回は、ろ材のみをコンテナ毎 抜いた飼育水で軽く洗浄する事とした。
方法は下の写真を参照・・・
洗浄方法の大切な点は、付着、棲息している微生物をそのままに有機物(デトリタス=生物群から排泄された有機物や死骸)だけを取り除く様に心掛けるという事です。
具体的には、飼育水を使用して振り荒い程度にする・・・決して研ぐように洗浄していけまません。微生物類は必ずバイオフィルムやクラウドを形成して棲息しています、有機物だけなら振り洗いで充分です。
これは、底砂(ライブサンド)の処置にも同様であくまで振り洗い程度で良いのです・・・デトリタスもベントス類(濾過食)の大切な食糧であり、ベントス類の排泄物は菌類の餌となります。ゴシゴシと洗う事はベントスや微生物類にダメージを与えるだけで良い事は何もありません。



④ホース類の洗浄
接続部の洗浄は非常に簡単です。キッチンハイター等を原液のまま吹き付けてポリ袋に入れて20~30分程度漬け込むだけです。 これで綺麗に落ちるので、あとは水道水で塩素を洗い流せば終了です。
このような洗浄頻度が高まると・・・底砂(ライブサンド)にデトリタス蓄積が相当進んでいるので底砂の洗浄が必要となるシグナルとなります。

⑤ 飼育水に漬け込んだ海藻等を水槽に戻し 新規海水(今回はレッドシー人工海水を使用)を入れる
この場合の留意点は、前述したとおり現状復帰が原則となります。
メンテ後の管理について
下の写真は・・・メンテ直後の写真となります。 水槽内の生物バランスも良くキラキラとした煌めき度の復元が高く水質は良い状態となりました。



- メンテ後の管理・・・
接続配管の汚れ具合やろ材コンテナの洗浄液の状況を考えると・・・キラキラとした煌めき度の復元状況は水槽内の「生物サイクル」「微生物ループ」など生物ろ過力は高まっているものの・・・底砂に確実にデトリタスが蓄積しており全体としてバランスが崩れ易くなっていると考える必要があります。
通常の管理、注意点は過去のブログに詳細に解説しているので参照ください。⇒
小型水槽に最適な「ろ過システム」と「メンテナンス」
具体的には・・・①水槽のキラキラした煌めく水質が維持されているか? ②水槽内の様々な生物叢に変化は無いか?(海藻葉先の白化、溶出や海綿のカビ化、プランクトンの湧きが少なくなる等)・・これらの変化をよく見て部分換水のタイミングを計って実施します。
水質テスター等の変化を良く言われますが・・・亜硝酸塩値、硝酸塩値の如実な変化よりこれらの水槽内の変化の方が早く、確実です。これらについては、過去に測定値の変化を実施したブログに詳細に記述しているので参考にしてください。
⇒ 海藻主体の小型水槽の楽しみ方(SEA-BONSAI)
むしろ、大切な事は・・・次回以降は、底砂の洗浄を含めてソコソコのメンテナンスが必要となると言う事です。 ライブサンドは小型水槽では非常に大きな生物ろ過のメイン装置となります。これらに手を加えると言う事は新規のライブロック(ライブロックは表面の石灰層は徐々に消失しますので・・・定期的な入れ替えが必要となります)や自家採取海藻、海水を用意すべき時期に近づいている事を現しています。 この全体的なメンテナンスを視野に入れて水槽内の変化を見ていく事が大切となります。
特に、微生物の偏りが続くと水槽内全体の生物サイクルに変調を来たしますので・・・自家採取海藻等で微生物を増やすして凌ぐべきか全面メンテナンスが良いのかを見極めながら見る事です。
次回生物ろ過編は、部分~全体メンテ(自家採取海藻投入パターン、底砂洗浄パターン、ライブロック入れ替えパターン等)の概要について具体的に解説して行きます。
また、ライブサンドの戦闘力はとても高いのでベントスクラウド中心にしたライブサンドの育て方(訓育)=水槽内自家製活性汚泥の作り方についても試論を展開します。