春季の水槽管理と採取
- 1年間を通して「春季」をどう捉えるべきか
前回の投稿で説明した様に、水槽内には長期飼育によって底砂にはシーズナルパターンを含めて自分の飼育環境に訓養されたバクテリアを始めとした微生物群が居ついてくるようになります。
海藻類のベストシーズンである初夏~盛夏に向けてバクテリア群を訓養してきた水槽に漸く「タイドプール再現」のテストが出来る状態となります。
そして無加温小型水槽で1年程度長期飼育して行くと春先は丁度ライブロックの交換時期となります。 - 時系列に示すと・・
①春 ライブロック、サンド(初期はサンドですが徐々にバクテリアが生息してライブサンドとなり長期育成で自分の飼育環境に訓養された生物群に変化していきます。シーズナルバターンを含めると1年程度で完成となります)と自家採取した海藻類、天然海水で水槽を立ち上げ。
※ ⇒ 小型水槽で大切な3要素(タイドプールまであと一歩)
⇒ 小型水槽に最適な「ろ過システムとメンテ」
②夏 定期的に自家採取した海藻類等豊富な生物叢(フジツボ、イガイやプランクトン、ベントス類)を水槽に導入してライブロックにも底砂サンドにもバクテリアを定着させ・・・水槽内に微生物ループを形成して行きます。 また、この時ベントスクラウドを投入して生物ろ過サイクルを強化します。
※ ⇒ 盛夏こそベントスクラウドを活用した夏バテ防止策(生物ろ過強化策)
③秋 盛夏では水槽内の生物叢が活発に活動する為デトリタス類が相当蓄積し水槽内の底砂を含めたメンテが必要となります。
※ ⇒生物ろ過強化水槽のメンテ(小型水槽メンテ大全)
⇒自家採取水槽のシーズナルパターンについて(タイドプール再現に向けての土台作り)
④冬 無加温小型水槽では、この時期が大変大切となります。定期的にメンテしてきた底砂には低水温でも活発に活動するバクテリア群が訓養され春に向けての大切な時期となります。
この時期は、定期的な天然海水での換水と水槽メンテに注力し底砂のバクテリアを自分の飼育環境に慣れさせて飼育、培養(訓養くんじょう)する期間です。
※ ⇒ 厳寒期~早春 自家採取の注意点について
- ライブロックの交換とメンテ
ライブロックに苔が着き出し赤紫色の石灰層が剥がれだす春先にはライブロックの入れ替えシーズンとなります。
ライブロックは水槽内の生きた「ろ過装置」である事を充分理解して入れ替えしましょう。先ず、質の良いライブロックを購入します。⇒ 私の場合は自家採取生物叢をメインに水槽を組み立てているので ①過度にキュアリングされていないもの ② ウミキノコ等ソフトコーラルやワーム、微小カニなどライブロックに付着、活着している等生物叢が豊富なこと ③石灰層が万遍無く覆っているサンゴ片である事 を留意して購入しています。
私は主にジェイズアクアリュウムさんから購入しています。
※ ⇒ ジェイズアクアリュウムさんのHPとなります。 - ライブロックは水槽内の生きた「ろ過装置」です。ライブロックの表面についた石灰藻の好気性菌による硝化工程により水槽内の水質浄化を担っています。 詳細については、下記のブログを参照して下さい。
※ ⇒ 生物ろ過について(タイドプール再現の基礎知識)
ライブロックを配置する場合は ①石灰藻が多く付着した面を上として必ず水流と光量が豊富に当たる様にする。 ②ライブロックのくみ上げる場合は水槽全体に水流が回る様にして、ライブロック間には必ず隙間が出来る様配置する。これらに注意しながら水槽レイアウトします。
具体的には、下のギャラリーを参照して下さい。






- 晩春の自家採取について
春の海は一潮毎に大きく変化します。
3月下旬~4月初旬にかけては、海水温も14~16℃・・・沖合のストラクチャー周りに漸く褐藻類、緑藻類が芽吹きだします。この時期の採取は厳しく採取量も僅かです。
4月中旬~5月にかけては 海水温も16~18℃・・・沖合ストラクチャー周りにフジツボ、稚イガイや褐藻類が大きく成長し出します。何とか水槽用の生物叢(特にフジツボ、イガイ周りにワーム、ワレカラ類が棲息し出します)も豊富となり採取もし易くなります。 5月GW以降は磯にも褐藻類が活着しだしますが、水槽に最適な紅藻類やイソエビ類は5月下旬~6月の初夏まで採取は厳しいと思います。まだまだ水温が低いので入磯は覚悟が要ります。入磯での採取は6月下旬~がベストシーズンとなります。
今回は、4月中旬~下旬に沖合ストラクチャー周りを探索して採取しました。 フジツボ、イガイ類が漸く付きだしたのでなんとか水槽用にはワレカラ、ワーム類を中心にプランクトン類を導入出来ました。
詳細は、以下のギャラリーを参照して下さい。 水槽内も元気にプランクトン類が活動し出しました。









ライブロックの再生
- ライブロック入れ替えについて
ライブロックは水槽内では、どうしても光量や水質により「劣化」して行きます。 具体的には ①石灰藻が白化する。 ②ライブロック全体に苔が生えて石灰藻が劣化しだしている。 ③海藻類が活着して張り出し石灰層の硝化活動を阻害しだしている。 ④ライブロックを持ち上げた時、砂状の剥落が多く出る。
これらの劣化症状が見られる場合はライブロックの入れ替え時期となります。 - ライブロックの再生について
小型水槽の場合、水質浄化におけるライブロックの役割は大変高いと言えます。私の水槽でも総水量の10%以上を投入しているのでその都度全交換はなかなか厳しいものがあります。
今回は、私が実施しているライブロック再生について解説します。 劣化の状態にも寄りますが完全に白化して無ければある程度の再生は可能です。但し、石灰藻を再生するには 褐虫藻や石灰藻の元となる生物叢と適切な光量、水流が必須となります。
よつて、再生については屋外(充分な自然光)である事と生物叢補充の為に使用水は天然海水が必須となります。 - 具体的な手順
① 劣化ライブロックの選別
完全に白化していなければ、残ったライブロックから程度の良いものを選別します。
具体的には、以下のギャラリーを参照ください。



②屋外での設置について
再生には強い自然光が必須ですので・・・日当たりが良い場所にエアレーションが出来て軽めのろ過が出来る水作等を投げ込める容器を準備します。私の場合は自家採取に使用している釣り用のエアーバッカン(30L程度)を使用しています。夏場の高水温や日射を考えると簡易に移動出来るものを使用しています。
これに、劣化ライブロックを入れて、少量のライブサンド、天然海水、飼育水を入れてエアレーションします。
詳細は、以下のギャラリーを参照して下さい。
1週間程度経過した段階で、キラキラした水質で、プランクトン等が湧いているようであれば問題ありません。 定期的に天然海水を入れる事が大切です。



この時期の注意点
- 無加温小型水槽では紅藻等が採取できるまでの水槽準備の最終段階となります。
冬越しをしたライブサンドや外部ろ過のろ材に生息しているバクテリア類を傷めない様に定期的な天然海水の換水と活着した海藻類の整理(褐藻類であれば最低限に間引きします)、ライブロック入れ替え、劣化ライブロックの再生等 自家採取のベストシーズンに向けての準備をします。 - 今までは、低水温のため「生物叢」=プランクトン類の活動も緩やかでしたが水温上昇に伴ってデトリタス蓄積や硝化バクテリアとのバランスが崩れやすくなります。コペポーダの湧き具合や換水インターバルなどキラキラした水質維持の基本を丁寧にトレースします。