水槽の構成要素とは?
- 小型水槽(横幅が45cm以下で・・一般的には40×26×30cmで約31L~45×28×29cm 約37L)で海水水槽でを行う場合は様々な要素により成り立っています。
その概要は・・・・
①飼育する生体
・魚、エビ、タコなどの生体
・石サンゴなどのハードコーラル(硬質サンゴ)
・ウミトサカ、スターポリプなどのソフトコーラル(軟質サンゴ)
これらの導入、飼育する生体に応じて水槽を組み立てて行くことににります
②内容物:
・海水: (天然、人工)
・サンド: (粒径により・・・パウダー~細目~中目~サンゴ砂がありライブサンドのようにすでにバクテリアやプランクトン,ベントスが定着したものもあります)
・ライブロック: (石灰岩等に石灰藻、ソフトコーラル、海綿など豊富な生物層がすでに活着し強力な生物ろ過装置として機能するもの)
・レプリカサンゴ(主に水槽レイアウトとしてサンゴや生体の為に配置、使用するもの)
③水質を維持、管理するための器具、装置
・水槽内の水質維持のためにはフィルター、照明やクーラー、ヒーターなど様々な器具を使います。ただし、小型水槽で導入出来るものは自ずと限定されてきます。クーラーの設置を想定すれば外部フィルターは必須となりますし、石サンゴの導入には照明強化は必須となります。飼い方によってはプロテインスキマーの設置も必要となるでしょう。
※ いずれにしても水槽の水質安定化は如何に生物ろ過を強化↑出来るかに尽きます。バクテリア、プランクトン、ベントスや石灰藻・・・付着している海藻や海綿らが活発に活動して自然の海のように「生物」による適切な硝化、脱窒作用と水槽内のさまざまな生物による生産、消化、分解が良いバランスの中で行われる事が非常に大切でこのベースの上に必要であれば各種装置を追加する。ベースは生物の活発な活動です。
詳細は次をクリックしてください・・・生物ろ過について(タイドプール再現の基礎知識) - 底面フィルターについて
底面フィルターの詳細は次をクリックしてください・・・・・・・・底面ろ過の仕組み
・水槽内の水質浄化バクテリア(好気性菌、嫌気性菌)を水槽内に敷いた砂に定着させ、底砂内で「生物ろ過」を行うシステムとなります。よって、以下の点を留意してセットする必要があります。
「粒径」「使用量=底砂の厚み] 「メンテナンス時のダメージ」
①底面ろ過では使用する砂の粒径と使用量を適切に選択する必要があります。具体的には粒径-中目を標準とすれば・・・粗くすれば流量↑となり酸素濃度は高くなりバクテリアにとっては良い条件となりますが、粗くすればするほど砂の表面積は少なくなりバクテリアが定着する場所が減り浄化能力は低下します。この関係はトレードオフの関係となるので初めは標準的な「細目~中目」程度を選択するのが良いと思います。
②底面ろ過の弱みとして、目詰まりし易くメンテナンスが煩雑な上にろ材が底面に敷いた砂となりますのでメンテナンス=定着した生物ろ過層に著しいダメージを与える事となります。底砂の中にはベントス、ヨコエビなど生物ろ過を活性化させる生物さえも失う事となります。これらを考えると、砂の粒径を細かくし過ぎない事とフィルター全面をマット等で塞ぎ微粉砂をある程度ここで止めておく必要があります。
②次に使用する砂の量⇒底砂の厚さにより、バクテリアの活性や種類が変わります。厚くするほど、ろ過面積は増し部分的には嫌気性の期待も出来ます。当然、ベントス等の活躍も良くなる事が合わせて期待できます。しかし、厚みが増すほど流量が弱くなり流れに偏りも生じやすくなります。これらを解決するには豊富なベントスを導入し厚みは10cm程度に止めるのが良いとおもいます。厚く敷く場合はライブサンドなどベントスやプランクトンが豊富な「ライブサンド」使用が良いと思います。 - 外部フィルターについて
外部フィルターの詳細は次をクリックしてください・・・・外部フィルターについて
外部フィルターも底面フィルターと原理は同じです。外部フィルターのろ材に水質浄化バクテリア(好気性菌、嫌気性菌)を定着させ「生物ろ過」を行うシステムです。よって、以下の点を留意してセットする必要があります。
「ろ材の選択」 「ろ材使用量」 「メンテナンス時の注意点」
①外部フィルターには様々な種類がメーカーより提示されていますが、基本的には「物理ろ過」「生物ろ過」「化学ろ過」のタイプ別に分けられます。
「物理ろ過」・・・ウールマットなど(エーハイムでは細目や粗目のフィルターパッド)で水槽内のゴミを物理的に濾しとるものです。細かいウールマット等では生物ろ過も期待できます。
「生物ろ過」・・・エーハイメックやサブストラットなど多孔質セラミックなどで作られており水質浄化バクテリア(好気性、嫌気性菌)を定着させ生物ろ過の主体となるものです。
「化学ろ過」・・・ゼオライト、活性炭などリン酸塩、硝酸塩などを選択的に除去する。活性炭などは生物ろ過にも寄与します。⇒ 但し、多生物層による生物ろ過が主体なので私はほぼ使用しません。
これらのろ材は様々な種類がありますが、基本は小型水槽にどのようなアプローチで接するかで変わります。オーバーフロー式のサンプ用であれば極限すればポンプ機能だけあれば良いとなります。通常の小型水槽に外部フィルターのみの場合、立ち上げ初期は「物理ろ過」を多めにして安定すれば「生物ろ過」を多くするのが普通となります。 私が実際に使用している設定を示します。
具体的には・・・ろ材の比率 「物理ろ過」10~20% (エーハイムでは 粗目、細目パッド各1枚)「生物ろ過」80~90%(エーハイムでは エーハイメック、サブストラットなど)となります。 これらを水流に従って「生物ろ過」-「物理ろ過」の順番に積層して行きます。
※ 具体的な設置等については、エーハイムさんののHPを参照する事をお勧めします・・・ エーハイムHP 2213説明
※ 販売されている各種外部フィルターはろ材の種類も多く、ろ材の組み合わせや積層をいろいろと試行しがちですが、あくまでも水槽水質の維持で大切な事は全体のバランスを考えて「生物ろ過」を支えているバクテリアやプランクトン等の原生動物を含む生物叢を訓育していく事が非常に大切でバランスが崩れると原生動物を含むバクテリア自体の構成の変化します。
※これは、非常に大切で飼育している水槽の・・・生体(魚、エビ、コーラル類)/ろ過フィルターの組合せ毎に水質浄化に関係する原生動物を含む生物層が変動していくという事です。水替え後や生体を入れ替えた時に今までキラキラした海水が普通の透明海水や下手をすると濁るのはこのためです。
飼育者に出来る事は、「水質浄化生物叢」を如何に育てて定着させるか?です。水槽で「魚など」を飼育する=「ろ過バクテリアを含む水質浄化生物層」を飼育する・・という視点が大切です。
※ 水質浄化の身近な下水処理場の活性汚泥は水槽飼育基本の考え方です・・・活性汚泥法については多くの自治体などがHPで公開しています。参考になるので目を通す事をお勧めします。
水質浄化の基礎知識となります・・・興味があればクリックしてください(福島市、池田市のHP)
活性汚泥 処理の仕組み
活性汚泥の微生物 淡水 - オーバーフロー式のサンプについて
オーバーフロー式は海水で一般的に使用されているシステムで、サンプに砂を厚めに敷いてろ過面積も確保出来、照明をつけて海草類を移植出来ればろ過面積を充分確保できるうえに海草類の働きにより硝酸塩類を素早く消化出来る。その上、サンプ槽を高めにすれば底部に嫌気層も確保して嫌気性により脱窒も可能でしょう。理想に近いシステムです。生物ろ過に特化した浄化水槽が別についている小さな水族館と言えます。
海水飼育に適した理想のシステムです。ただし、設備自体がどうしても大型化して・・・小型水槽でタイドプールを再現するという目標とはアプローチが異なるので今回は詳細な説明を省略します。 - その他の器具について
①照明
・照明には2つの側面があります。一つは生体(ハードコーラルや魚など水槽に導入するもの)が必要としている光量、2つは生物ろ過に寄与するライブロックの石灰藻や海藻が必要としている光量です。
・導入する生体に必要な光量は・・・コードコーラルも含めサンゴ類は好日性なのか棲息している深度はどうか?など導入するサンゴの種類によりフルスペックスペクトルが必要な種類により7000ケルビン、1000ルーメンは必要があるなど様々になりますが、タイドプールの再現となればライブロックの石灰藻や活着している海藻類への必要光量を考えればフルスペックLED20~30W程度であれば問題ないと思います。あくまで石灰藻の働きを促す事が大切だと考えます。
②ヒーター
・私が採集場にしている三浦半島 三崎周辺では冬場の海水温は沖合で最低14℃まで低下します、また海藻は一部の種類を除けばほぼ枯れています。だいたい4月下旬~海藻が生えだして6月には密生して林を形成しだして夏場に向けて旬を迎え11月くらいから枯れ始めます。
※ 自然のリズムに従うタイドプールの考え方から、私の場合はヒーターはつけていません。
②水槽クーラー
・水槽を維持していく上で水温の上昇は一番ダメージを与える因子だと考えています。三浦半島 三崎周辺の夏場の海水温は小田和湾沖合の海上では26°程度までは上昇します・・・この程度が限度と考えています。
水槽クーラーはどうしても設備全体が大型となり外部フィルターなり水中ポンプが必須となりますので、室内クーラー程度にします。
小型水槽生物ろ過の土台・・具体的なアプローチ
- 小型水槽(30L~40L程度)で使用されるフィルターは水槽容量とのバランスからも①底面フィルター ②外部フィルター(水流から考えると実使用ではエーハイム2213↓)が想定できる。ろ過面積を考えればオーバーフローで大容量サンプ+出来ればリフジウム化が水質維持に理想的な選択と言える。・・・言い換えれば小型水槽はより「生物ろ過」を意識した組み立てや管理が必要となる。相対的に各水槽の構成要素を吟味して「生物ろ過」システムを丁寧に組み上げる事がとても大切である。
この項目では、小型水槽の大きな構成要素である水槽内容物であり、生物ろ過の主役である・海水・底砂・ライブロックについて各々の意味・役割・注意点について説明します。
基本的な考え方については、以前アップした「小型水槽で大切な3要素」を参照してください
⇒ 小型水槽で大切な3要素(タイドプール再現を目指して) - 天然海水について
水槽内容量のほとんどを占める海水は、小型水槽にとって大切なアイテムである事を再確認する必要があります。天然海水には豊富なプランクトン(浮遊生物)ニューストン(水表生物)ネクトン(遊泳生物)や浅瀬であればベントス(底生生物)も含まれるでしょう。これらが「微生物ループ」(植物プランクトン~バクテリア~プランクトンなどの原生動物からなる有機物の排出、分解、消化-栄養素の循環ループとなる浄化システム)を形成します。これが自然の海では日常的に行われている窒素等の物質循環=浄化です。
水槽内に発生する苔等もそれらを餌とする捕食者が水槽内に居なければループが回る事はありません。只の厄介者とみるか、捕食者とのバランスとみて全体の生物層を再考するかによってアプローチが変わります。
その、ベースとなるのが「海水」です。私が「天然海水」に拘るのは水槽内の生物叢を作る時に天然海水では立ち上げや維持にベターな選択だからです。
①天然海水の採取について
採取に当たって留意すべき事は・・・1.海水が滞留しているような場所(漁港の船着き角等ゴミが溜まっている所)での採取は避ける⇒これは過剰なデトリタス(生物由来の残渣、死骸など微細な有機物が多く、懸濁状態)が多く含まれ溶存酸素量↓↓であり水槽への投入はダメージが多すぎる 2.養殖生け簀などが近くに設置されている⇒ 養殖用のエサや魚の排泄物が多く過度に富栄養価の海水であり水槽への投入は避けるべき 3.小さい漁港などの潮通しが悪い場所で透明度の無い場所⇒ 特に雨の後などは水潮となり笹濁り状態では避けるべきと思います ⇒塩分濃度も低く大抵、緑色の海水で植物プランクトン↑↑で水槽導入には向きません、当然赤潮、青潮の採取は不可です。
それ以外は、海水の汲みやすさなどの利便性で決めれば良いと思います。
②使用容器と保管について
冬季など気温の低い時期はポリタンクで充分です。夏季など気温が25℃を超える場合は採取海水の溶存酸素量↓となりプランクトン等が死滅しますので釣り用のブクブクでエアレーションが必要となります。
保管については、私の場合は夏季以外はポリタンのままで屋外に保管し1~2週間で使うようにしています。夏季についてはエアレーションをしながら室内保管し1週間程度を目安に使います。 - ライブサンドについて
ライブサンドはベントス(底生生物)が棲息する非常に重要なアイテムとなります。底砂は水槽内の20%程度を占めるろ材であり、これが水槽内の浄化システムを左右します。水替え時に汚泥(主にデトリタス)が舞うところを見た事があるはずです。この汚泥を分解、消化、硝化するのがベントスと好気性細菌となります。この住み家となるのが底砂です。水槽内のメイン生物ろ過装置と言えます。
底砂を如何にライブサンド(生きた砂)とするか?⇒ ベントス類(ワーム、ヨコエビ等)が生き生きと棲息して動く事により好気性細菌が活発に活動する環境を作ることが水質浄化を左右します。
①ベントスとは何か?
一般的にはデトリタス食者=捕食者です。貝類、ワーム類などはその有機物を濾しとりアマモなどは根から吸収しカニは捕食します。ベントスは砂底に生活圏を持つ者の総称なので沢山の生物が関与して活動し好気性細菌に栄養素を供給し結果として硝化工程により水質浄化となります。また、ベントスは底砂内を移動する事により「生物撹拌」が行われ、細菌=バクテリアが賦活され活発に活動します。この生物叢の営みこそが大切です。
これに、ライブロックで説明しますが海藻類=自然では藻場の周りでも同様に強い食物連鎖-微生物ループ=水質浄化システムが作られます。
※ ベントスについては、次の文献が大変参考になります。
興味のある方は一読してみて下さい ⇒ 海岸動物の生態学入門 日本ベントス学会編 海文堂
②ベントスを定着させる方法
ベントスを定着させるには底砂にある程度の厚みが必要となります。小型水槽でも7~8cm程度は敷く必要があります。厚みと好気性菌とはトレードオフの関係にあるのであまり厚いとベントスが定着し生物撹拌を行っても部分的に嫌気性部分が生じます。加えて粒径もパウダー等細かすぎる砂を使用するとより顕著に嫌気性となるので注意が必要です。具体的には中~細目粒径を使用し上にサンゴ片を撒くイメージとなります。
具体的には、これに・・・
1.自家採取した海藻等を置き付着したプランクトンが移植されるようにする。または、採取した海藻をバケツに入れた海水中で強く振ってください。付着プランクトンが多量に取れるのでこの海水を敷き水に使用してください。海藻の種類により付着プランクトン量、種類が変わります。
一般的には柔らかく、細かい葉質のものにプランクトンが多いようです。(これも、岩礁帯やゴロタ場など採取場所により変動がありますが岩礁帯脇のゴロタを含む潮間帯に自生しているものがプランクトンが多く良いと思います)私の場合は、ヒラガラガラ、トサカモドキ、キジノオなどを使用する事が多い。
下の写真は自家採取した潮間帯です⇒ 海藻が繁茂しています
※ 採集場所で、専用ネットを用いて海中で海藻を振りながらプランクトンだけを採取しています⇒ プランクトンリッチ海水を得ることで水槽内に移植しやすくしています。
2.市販のライブサンドを購入して使用する方法もありますが、棲息しているプランクトン量、種類が少ないですが既に定着して生活圏を作っている物ですので導入するベースとしては有効です。 - 使用ライブロックについて(簡易活着と生物叢への組み立て)
ライブロックはそれ自体が生物ろ過装置です。小型水槽(30~40L程度)に3~4kg導入する場合生物ろ過装置として水量の10%程度を占めます。ライブサンドに次ぐ大きな役割を担っています。
これらに、海藻、イガイ、海綿、フジツボ等のベントスを活着させる事により強いろ過装置が生まれます。ライブサンドでも説明したように多くのベントスが水質浄化システムとして機能します。これらの生物叢をどのように定着させ彼らが生き生きと棲息する環境にしていくかが水槽水質を左右するのです。
①ライブロックに多生物叢を作るには、海藻、海綿、イガイ等の二枚貝かフジツボを活着させます。自家採取した海藻、海綿を中心にライブロックに密着させて活着させます。サンゴ片かフジツボ片で囲み水中接着剤で付けて固定すると良いでしょう。イガイなどは足糸で自ら活着しますのでレイアウトを考えながら配置するだけです。この時、大切なのは海藻の選定となります。
イソモク、ホンダワラなど褐藻のほとんどは保管中も水槽でも褐色成分が滲出して水質を著しく悪化する場合が多いので避けて下さい。緑藻の仲間は水槽で色彩も良くレイアウト的にも良いのですが活着性は弱く溶け出して水質を徐々に悪化させるので導入は慎重にすべきです。また、イワヅタやアマモ等一般的に高光量↑↑が必要で水槽全体のバランスを壊しやすい事は留意すべきです。私はこれまでも色々試しましたがヒラガラガラ、トサカモドキなどの紅藻類の導入が良いと考えます。
採取した海藻は海水バケツで良く振ってプラントクンが多量に付着している事を確認してください。プランクトンが付着していない海藻は水槽導入は見合わせて下さい。(プランクトンチェック)
※ 自家採取した海藻には様々な種類のプランクトン、ベントスが付着しています
⇒ 実際のプランクトン顕微鏡写真を下に貼り付けました
※ 葉質も柔らかく細いテングサ目はプランクトンの湧きも良い海藻ですが漁業権が設定されている事が多いので注意が必要です。
海藻は種類も多いので図鑑で見ておくのが賢明です
参照文献 ⇒ 海藻 ネイチャーウオッチングガイド 誠文堂新光社
②海藻、イガイ、海綿、フジツボ等を活着させたライブロックにはプランクトン、ベントスも集まり生物叢を形成して水槽の水質も良くなります。しかし、これらの生物は多量に入れると夜は二酸化炭素を発生し溶存酸素量↓↓となり水槽全体のバランスを崩しかねませんので・・・あくまで水槽全体を見て控えめに入れて調子を見ながら必要ならエアレーションなどをしてください。








小型水槽のフィルター毎のセッティング、立ち上げ
- 底面ろ過システムのセット、立ち上げまでの留意点
全般
① 底面ろ過は小型水槽では少ないろ過面積を簡便に確保できる反面、底砂の細粒が詰まり易くベントスの定着が少ない場合はデトリタスが蓄積しやすくフィルターのメンテナンス=生物ろ過層へのダメージに直結する弱点がある。
底面2基設置の詳細は・・・ 過去のブログを参照ください⇒ 底面ろ水槽-2 底面ろ過水槽-3
②小型水槽(30~40L)では・・水量の関係から変化が激しくなり維持には工夫が要ります。これらを克服するためには生物叢の厚みを増して「生物ろ過重視」として先ず「海水、底砂、ライブロック」などが活発に活動する様に「空回し」を約1週間程度は実施する事です。これは、淡水であれ海水であれ・・・共通の大切な事です。バクテリアも湧いていない水槽では良い「飼育水」とはなりません⇒ 水槽は水作りが成果を左右します。(トラブルを招きやすいのが・・・水槽の立ち上げです⇒ これを軽減するには天然海水+ライブサンド+多生物活着ライブロックを使用するのが良いと考えています)
セット時に留意する事柄
※底面フィルターの場合は一つひとつの工程を丁寧に行う事が大切です。どれかに不備があると必ず目詰まりを起こして再設置する事になるのでゆっくりと慎重に行って下さい。
①メンテナンスのインターバルをどれだけ長く出来るかがポイントとなります。底面フィルターに直接砂を敷く事は大変危険です。どうしても細粒砂がフィルターの隙間から入り込みます。
②これらを防止するためには、不織布のキッチンペーパーで底面フィルターを覆うように密着させ細粒砂が直接フィルターに入らない様にする事です。その上で8Dマットなどを底面フィルターの大きさに切り取り底面フィルターを囲むように置いてください。その後で・・・底砂を敷いてください
③スクレーパーを持ちいて砂を均しながら7~8cm底砂を敷いたら、表面にはサンゴ片を撒いてください(ヨコエビの棲み処となります)全体を見て問題ないようならライブロックを組み上げます。
④ライブロックのくみ上げで大切な事は、各岩に水流が万遍なく行き渡る様に必ず隙間を作り水流が岩の周りを流れる様にイメージして組み上げましょう。組み上げて隙間から反対側のガラス面が見れるくらいが良いです。これは、石灰藻は水流と光量を好みますので滞留部が出来ない様にすることが大切です。ライブロックは水槽容量の10%↑は投入してください。
⑤底面フィルターの吐出口は水槽全体に水流が回る様にパイプの向き調整してください。後は静かに海水を注ぎポンプを回して、1週間程度は空回しをして様子を見ます。
⇒ 多生物叢ライブロックやライブサンドを使用していれば 2~3日程度でコペポーダ(カイアシ類)やヨコエビなどが水槽内で湧き始め、海水は煌めくように輝くと思います。
※ セット関係の画像は下にあります・・・ - 底面+外部システムのセット、立ち上げまでの留意点
外部ろのブログに纏めて記載しました(更新中)⇒ クリックしてください。
※ 底面+外部フィルターハイブリッドシステム

「底面フィルターのセットは不織布を使う」
底面フィルターをセットする場合、底砂中の細粒がフィルターに噛みこむことがトラブルの主因です。一つひとつ丁寧に作業を行う事が大切です。⇒フィルターに直接底砂を敷くと砂噛みが確実に発生します。・・
この時、使用するのが写真のキッチンペーパー(不織布)を底面フィルターにぴったりと貼り付けるようにしてその後に8Dマットなどで押しつけて、その上に砂を敷き詰めていく事です。その時にスクレーパー(パン用が適度なしなりがありお勧めです)で底砂均らしながら敷き詰めていきます。

「底面フィルターセット時の注意事項-1」
写真は使用していた底面フィルター(カミハタ リオプラス)ですが下部に底砂の細粒砂がフィルター内部に滞留しているのが認められます⇒ これがポンプのマグネットインペラーに噛みこみ停止の原因となります。⇒底面フィルターでのポンプ停止はそののまま底砂を掘り出してメンテとなり、水槽内の生物ろ過層にダメージを与えてポンプ復帰後も水質回復には時間がかかり水質低下を招きます。せっかく定着したバクテリアやベントスにダメージを与える事は避けるべきです。⇒ そのため、不織布を密着させる、8Dマットを敷く・・・その上に均一に底砂をセットしていく等の丁寧なセッティングが大切です。

「底面フィルターセット時の注意事項-2」
底面フィルターのポンプ吸水口を上から見たものです。流量調整版がみえますが、この調整版に緩みや調整不良があると調整版脇の隙間からも吸水されるので海藻の切れ端などが吸い込まれて噛みこむ事があります。⇒ この流量調整版のセットもしっかり見る必要があります。ポンプ本体をはめ込む時は隙間が無いか必ず確認しましょう。
水槽の維持と管理(水替え等)
- 水槽の維持とは?・・・そもそも維持すべき理想の水槽とは何かをイメージしてください。
理想の水質とは水槽内の生物が生き生きとして活動し生物ろ過が進み・・結果として水質が良くなり透明でキラキラと煌めくような海水となっている事です。透明さよりはキラキラ具合を指標とします。
水質をpH、硬度、Caイオン濃度や硝酸塩、亜硝酸などをテトラ・マリンテストなどの試薬でチェックすることは大切ですが・・・大切なのは水槽の中を良く観察してみて下さい。下の写真の様に水槽内の生き物たちが生き生きとしている事が第一です。

「水質は水槽内の生き物が教えてくれる」
底面フィルター2基 37L水槽でセット後・・約2週間の状態。海藻採取時に一緒に取れたイソスシエビが生き生きとしている。
この様に水槽の状態は生き物たちが生き生きとしている状態が良好な水質といえる。
これに、ベントス類(出来ればワーム類)がしっかりと棲息すればデトリタスを消化し、その排出物をバクテイリアが硝化工程を行う事で水質浄化は保たれる
この状態に変化があれば水替えなどの水槽メンテが必要な合図である。

「水質は水槽内の生き物たちが教えてくれる-2」
これは、細かい葉質の海藻に潜んでいるヨツハモガニでよく見ると頭に海藻の切れ端を乗せているのが判る。このカニは水に慣れると海藻の切れ端を乗せるので指標となる。様々な生き物に水槽の水質は支えられている事を再確認しましょう。彼らが海藻に付着している苔や有機物を摂取して消化、分解、排泄するおかげでプランクトンなどの原生動物が餌として摂取できます。これが・・・「生物サイクル」「微生物ループ」を回してくれるのです。
- 日常の点検について
①硝酸塩、亜硝酸値について
水槽内の生物ろ過が順調に推移している場合は No3(亜硝酸イオン)10ml/l↓ No2(硝酸塩)2ml/l↓とテトラ マリンテストでも僅かに変色する程度で推移します。生物の排泄物(アンモニア等)が好気性菌(ろ過バクテリアと言われるもの)の硝化工程によって硝酸塩へ、嫌気性菌の脱窒工程によって窒素に変化していきます。よって、この値は生物ろ過効果を計る大切な値と言えます・・・
これらは、水槽内の「微生物ループ]の根幹をなすもので・・採取場所から移植された様々な細菌-海藻や海水に浮遊している植物性プランクトン-捕食者であるコポペーダ等のカイアシ類やワレカラ、ヨコエビ類や上位にに居るイソガニ、藻ガニ、スジエビなどが作る絶妙なバランスの中で浄化システムを形成しています。
硝酸値や亜硝酸値が高い場合に、市販のろ過バクリア(好気性菌)を直ぐ投入しがちですが、私の場合は先ず原因を探します。水槽という「身体」を診るドクターとしての視点で見て下さい。対症療法はその時の効果はあるものの長続きしません。
②pH、KH(炭酸塩硬度)、Caについて
先ず、pHですが、海水のpHは8.1程度で弱アルカリ性です。生物ろ過とpHの関係を見てみると排泄物を細菌が硝酸塩に硝化する段階でpHは下がります。生物ろ過が順調に推移すれば酸性化しますがKHが高い海水では単純ではありません。KHが高い場合は炭酸塩が緩衝材として作用しpHの変化は緩やかになります。その上、Caとは相補の作用関係にあるため単独での管理値とはなりません。海水水槽ではpH-KH-Caは全体として管理すべきと言う事です。
30~40L水槽に底面で7~8cmの底砂、ライブロックを3~4kg投入した場合、底砂、ライブロックからのCa溶出もありKH10°↑ Ca400mg/l↑ pH8.2~8.4程度が通常となります。共に通常の海水水槽よりはやや高めとなります。この程度の範囲であれば問題なく神経質になる必要はありません。
③水温について
海水、海藻採取の場所が沖合でも海水温 14~24℃で推移しているためとタイドプールの再現というアプローチからヒーター、水槽インラインクーラーは使用していません。
室温での飼育となっています。冬場も室温8℃程度まで低下しても加温はしていません。特に海藻を多種類移植しているので海藻の自然状態で放置しています。活動を停止していたり枯れたりしますがそのままにしています。但し、夏場の高温期は相当注意が必要です、部屋のクーラーで対処してください。それでも水温が30℃に近づくとエビ、カニ等は良いですがウミウシ等がいる場合は高温に弱い種類もいて溶け出して水質悪化となります。この場合は全換水を実施する必要があります。
④エアレーションについて
海藻、イガイ、フジツボ、海綿等を活着したライブロック等の多生物叢を作るとどうしても酸素不足は否めません、特に海藻は夜になるとCo2を排出しますので最低、夜間や夏季はエアレーションをすることが必要となります。 - 水替え等メンテナンスについて
①水槽内のヨコエビ、コポペーダ等のプランクトンや底砂中のベントス(ワーム類)が活発に活動している場合(夜間に水槽ガラス面にプランクトンが湧いている、底砂中にワーム類が動くのが確認できる)は何もしません
※ 但し、硝酸塩、亜硝酸値が高い場合は予防保全として1/4~1/3程度の換水を実施
②底砂にベントス類が認められない、今まで湧いていたプランクトンが見当たらない、イガイ、フジツボ類のベントスが死滅し始めている等があれば、天然海水による1/2~全換水を実施します。⇒ これは硝酸値、亜硝酸値に関係なく実施します。 生物ろ過サイクルの不調は数値では無く生物が教えてくれるからです。
⇒ ※通常、1~2日後にはプランクトンが湧きだします。
③フィルター関係のメンテ・・・目詰まり
目造りが酷く底砂がろ過材の役割を果たせない場合は、底砂を掘り出して噛みこんでいる砂等をインペラー掃除で復帰します。
この時の重要な事は・・・決して底砂をいじらない⇒洗わない、ドトリタス(汚泥)も捨てない、フィルターを覆っている不織布のみ廃棄、出来ればライブロックの配置も変えない、調子のよい状態であれば水槽海水はそのまま使う
※手順は以下の通りです
1.水槽の海水をバケツに抜き、ライブロックを上から順に移す(活着している海藻が剥がれない様に丁寧に)
2.底面フィルターポンプ部を外す。底砂に埋まっている場合は破損に注意。
3.底砂を片側に避けて、底面フィルターを掘り出しフィルター内部に砂が混入している場合は水道水で洗い流して除去する。ポンプ部のインペラー部分を掃除して駆動を確認する。
4.8Dマットなども洗わず底砂と一緒にトレーなどに移して置く。
5.デトリタス等が舞い、汚濁するが決して捨ててはいけない(細菌-有機残渣が凝縮した塊)回収した海水と一緒に作業終了後に水槽に戻す。
6.生体等を飼育している場合は網などで掬い別の容器に保管しておく。
7..掃除が終了したら、再セットしてライブロック、海水を戻し、最後に生体をもどしたら終了
8.デトリタスが予想以上に多い場合は1/4~1/3程度は廃棄しても良い、この場合は海水も新鮮な海水を使用する。
9.必ず、メンテ後の水槽内の状況を確認し必要であれば天然海水で1/4~1/3の換水を実施
※ メンテ後は・・・水槽内の生物叢を見て生き物たちの調子が良いか確認する。

「メンテナンス後の状況確認」
生物サイクルが順調に回っている水槽は、プランクトンの湧きも良く底砂にはベントス類が活発に動ているのをガラス面から確認できます。
換水や水槽メンテを行った後は必ず水槽の状況を確認してください。
水槽は丁寧に育てると・・・楽しい

「底砂中にペントスが活動している事が大切」
この様にベントスが複数底砂に棲息している事は底面フィルターを使用している場合、とても大切です。
ワーム類がデトリタス(汚泥)を摂餌してバクテリアの餌を供給すると共に底砂を好気性に保ち好気性菌の硝化工程を活性化↑↑するからです。