小型水槽でタイドプールを再現する場合、より生物ろ過↑↑を進める必要がある。
解決法として底面フィルターと外部ろ過を組み合わせたシステムにより達成する。その具体的的な設置法、管理について詳細に解説する。
外部ろ過フィルターの仕組みと底面フィルターとの比較、併用の理由
- 水槽内の生物ろ過の概要については・・・基礎の考え方です・・・以下のページをクリックしてください。
水槽内の生物ろ過
生物ろ過の仕組みと支えるもの - 外部フィルターを小型水槽に使用する場合の生物ろ過でのメリットとデメリット
※ メリット: ①ろ過層全体を外部フィルターとするため水替え、ろ材の洗浄等水槽メンテナンスが非常にし易く手間も底面フィルターと比べると段違いに容易。⇒ 水替えや水槽メンテ自体が生体やバクテリア等にストレスを与えるので・・これらの行為は短時間で小規模が望ましい
その点、エーハイム2213のろ材バイケット等を使用すれば取り外し簡単でマットの交換等で済ませられれば水槽へのダメージは少ない ②ディフィザーやクーラー設置等自由度が高く水槽レイアウトしやすい
※ デメリット: ①小型水槽に限定すると・・・そもそも30L程度の容量に対してはややオーバースペックは否めず水流もナチュラルフローを付けても強く水流の苦手な生体(ソフトコーラル等)には厳しい。
②外部フィルターはろ過面積の確保では底面フィルターには及ばす2213でもろ材容量は3L程度と少ない⇒生物ろ過能力はどうしても相対的に脆弱 ⇒ 厚くライブサンドを敷いた底面と比べると嫌気性部分を作る事自体が難しく脱窒効果は望めない。
※ 視点を変えると・・・底砂を厚く敷いて、底面フィルターに接続出来れば小型水槽でオーバースペックになりやすく制御し難い外部フィルターも利点となる。・・・特に、底面フィルター2基方式は既に安定して稼働出来ているので、その手法(不織布キッチンペーパーで細粒砂を遮断し8Dマットで囲えば安定して目詰まりを防止できる)を展開して底面+外部でよりろ過能力↑を目指す。
詳細な解説は過去ブログで説明しています・・・
底面フィルター2基システム事例 - コスト比較(4月段階でアマゾン、チャーム購入時)・・・今回の場合(30L~37L程度) フィルターだけを比較すると
底面:
① フィルター カミハタ リオプラス底面フィルター 約2700×2= 5400円
追加設置マット MUYYKA 8D立体マット 約1380
計 約6780
② エーハイム底面直結フィルター 6300円 ⇒ 底面で使用する場合は2213等外部フィルターが別途必要となる。
追加設置マット MUYYKA 8D立体マット 約1380円
計 約7680円
外部:
今回は新規で購入した場合をアマゾンより推定しました。※私は、淡水水槽で以前使用していたもを流用しています。あくまで、参考値です
外部フィルター:
エーハイム2213クラシック 12480円
ダブルタップ 約2300円
シャワーパイプ 約1300円
計 約16080円 ⇒ ※ ろ材等を抜いての金額で・・・カミハタ等単品使用出来るものと比べるとコスト高は否めません。
※ 私の場合は、以前使用したものを転用しましたがろ材や周辺部品も高く外部フィルターの小型水槽への導入は費用/効果を見ていく必要がありますが・・・より生物ろ過を強化した底面+外部のハイブリットシステムは小型水槽を想定すると捨てがたい選択となります。現状エーハイム2213を外部フィルターとした場合、ホース径 12/16に合う底面フィルターはエーハイムしかありません。カミハタのフィルター隙間は絶妙で底砂とは相性が良いのでエーハイム▲の場合はカミハタ給水口の加工も選択枝となります。
底面フィターと外部フィルターの併用の設置法
- 外部フィルターの弱点と底面フィルターの良い点を組み合わせた、「エーハイム2213+底面フィルター3541」で設置する方法を説明します。
底面系の水中ポンプがエーハイムに変わっただけですので、底面の弱点である目詰まり対策は必須となります。
① 外部フィルター EHIME 2213
② EHIME 3541 (底面フィルター)
EHEIM2213のホース径に接続出来る底面フィルターは3541のみになります。 この底面フィルターはカミハタと比べるとろ過面積はフルセットすると60cm程度まで対応できます。 しかし、フィルター隙間はやや大きくろ過面からストレートに入る構造の上、脇からも入り易い構造となっています。メーカー推奨の砂粒径は3-5mm・・・目詰まり防止のキッチン不織布と8Dは必須となります。
以下に写真付きで注意点を記載します。
「EHEIM3541の全体像」
部品数も多く、クリップと止水版で底面フィルターボックスを繋げて組み立てる形となります。
部品のガタ等は少なく・・・さすがにドイツ製という感じですが組み立てにはコツが要ります。
「止水版のセットは注意が必要」
写真は底面フィルターのボックスに止水版を嵌めるところですが・・・無理をしてはめ込もうとすると破損します。
裏側から見ながら、スライドして入れるという感じで組みます。
- 水槽への3541のセット
写真の様に、事前に不織布で覆い、8Dマットで囲い細粒砂の目つまりを防止する事が重要 - EHEIM 3541と2213の接続
①水槽に合わせて、EHEIM3541を事前に組み立てて置く。
②組み立てた底面フィルターに不織布を隙間の無い様に覆い、8Dマットをフィルター部にセットする。
※ 再セツトなどで使用する場合はろ過バクテリアが棲息している使用済8Dマツトは決して洗わずそのまま使用する。不織布は廃棄)
③水槽に3541底面フィルターを水槽に設置する。立ち上がる排出口はその後のライブロック、海藻等の位置を考慮して配置する。続けて底砂を3~5cm程度敷く。
④2213外部フィルターを仮置きして本体、ホース、吸引パイプ、吐出パイプ(今回はシャワーパイプをレイアウト上、穴一つ分切断して使用した)との位置関係を見ながら12/16ホースを必要分切断しながらセットする
※ 2213のホースについては、「本体タンクの給水パイプ」-「ダブルタップ」-「3541サクションパイプ」-「本体吐出パイプ-ダブルタップ」-「吐出シャワーパイプ」の順にホースの長さを調整しながら接続していく。
※ この仮接続は非常に重要なのでひとつ一つ確認しながら行う⇒ EHIMEのホースは固く柔軟性が無いので捻じれを調整しながら僅かに短めにセットする事がコツ、特に捻じれは強く影響するので特に注意する。
⑤ ダブルタップより2213本体を外し、ろ材コンテナを入れ海水を満たす。満たしたら、給水側のタップバルブを開けエアーを抜いておく。次にタンク海水を補充しながら杯にしてモーターヘッドをセットしたら吐出側のタップバルブを開けてエアーを抜く⇒ これをする事で再度、底面フィルターに接続した後にスイッチを入れればスムーズにポンプが始動します。
※ ろ材コンテナは事前に水槽水または、ろ過バクテリアを添加して2~3日程度浸漬しておくと水槽立ち上げがスムーズになります。
⑥ 2213、3541を再度、接続したら残りの底砂とライブロック、海藻等をいれて水槽全体に海水を満たす。
※ 注意点は、底砂を厚くする事とライブロックは隙間を開けて組み上げる事です。
⑦ダブルタップを開放して、ポンプを回す。
全体の手順は写真で如何に示します・・・
- EHEIM 2213、3541併用ハイブリッドろ過システムの注意点について
①このシステムはEHEIMが基幹部材となつているので・・・再セット、メンテは煩雑となる事が否めない
※ よって、底面フィルターの弱点である目つまりを如何に防止するかが重要である。⇒ 底面×2基方式で確立した不織布の細粒砂混入防止を徹底する事が要諦である。
記載した様に、丁寧に設置すれば問題ないと考える。
②底砂量を相当多くしており、ベントスが豊富で活発に活動する必要がある。⇒ どうしても嫌気性部分は発生し易くなりデトリタス(汚泥)の沈殿量も増える事となり水質悪化を招きやすい。
立ち上げ状況と水質メンテについて
セット状況は下の写真を参照・・・
「立ち上げ直後の状況」
このシステムの狙いは・・・①底面ろ過の良い所であるろ過面積↑↑を更に補強(底砂8~10cm)し、弱点である目つまりを不織布で解決した。②外部ろ過の利便性と静粛性を担保した上で3Lのろ材量も確保出来る ⇒ ※お互いの良い所が補強出来たの
で・・・
ろ過面積/水量が従来の底面フィルター×2基の
30%⇒38%と補強出来た。
- 水槽水質のベンチマーク
立ち上げ当日の水質は・・・
pH 8.2 KH 10° Ca400 No2 2.5 No3 20・・・問題無い値
⇒ この程度を維持していきます。
これらの値を維持していても・・・以下の水槽内の生体の変化があれば水槽からのシグナルですので水替え、投入生体(海藻等を含む生体)の入れ替えなどが必要となります。
①イガイ、フジツボ、イソガニ、スジエビ、海綿、紅藻等の状況
水槽内の生体では、貝類、フジツボ、海綿等が初めに変化を現します。具体的には・・・貝類が殻を閉じてしまうフジツボが蔓脚を開かない、海綿の体色が変化しカビ等(主に白カビ)に覆われだす。⇒
※ これらの変化がある場合は急激に水質悪化になる可能性があります。生体導入直後の水合わせ時期を除けば生体自体を水槽から出す必要があります。この時、No2、No3値にはあまり変化が認められませんので見過ごすことの無いようにしてください。特に貝類の死滅は急速な水質悪化を招きますので注意が必要です。
海藻等については、緑藻を導入した場合は、溶け出して葉先も張りが無く白化して柔らかくなり徐々に水質悪化を招くので注意しましょう。
※ これらの生体に特徴的ですが、採取場所の再現が出来てない場合に顕著に現れます。特に磯場や沖合ストラクチャー採取物は酸素と強い海流を必要としますので導入量を控えるか、ディフューザーなどでエアーを強制的に入れ、水流も強くしてください。
②プランクトン、ベントス類の状況
底砂にベントス(ワーム類)の穴道が認められ活動が確認できる、ヨコエビ、コペポーダ(カイアシ類)などのブランクトンが夜間にガラス面に湧き出しているのが確認できる。⇒ 多生物叢生物ろ過が順調に立ち上がるとこの現象が現れます。
※ これらのプランクトン、原生動物類が活発に動いていない場合は、 現地採集のプランクトン、ベントスを導入し合わせて採集海水での1/2換水で効果が現れます。
③ガラス面に付着する茶苔、臭気等の状況
ガラス面に茶苔等が付着し出した場合は、明らかに水槽内が富栄養化しており、デトリタス(生体の死骸、排出物)が増加した事を示しています。通常は水槽内に発生したデトリタスはプランクトン、ベントスが摂餌、消化しそれをバクテリア(好気性菌、嫌気性菌)が硝化、脱窒する=「微生物サイクル」ことで水質浄化されています。 このバランスが崩れて結果として茶苔等が発生します。光量の関係もありますが、大抵は富栄養化が主因です。この場合は大抵、臭気も発生し異様に磯臭くなります。漁港の潮が緩んだ溜まり場の独特な臭気となります。
※ 現地採集物はどうしても水槽に多く入れたがりますが・・・多いと最終的に全部がダウンします。初めは少ない位が良いと思います。(特に、エビ、カニ、ウミウシ、海綿等)
引き金は、①に起因している事が多いようです。ここまで来るとダメージは大きいと考えて下さい。 臭気まで来た場合は・・・全換水と水槽内に導入したライブロック、海藻を含めた全生体のチェックを実施し廃棄するものと入れ替えも検討する必要があります。
※ この状態にまで至らない様に、日々の点検と換水は適宜行う必要があります。 但し、それほど神経質になる必要はありません。水槽内の変化は生体が教えてくれるので、状況を見て判断します。
小型水槽とハイブリットろ過の可能性
- 「小型水槽の最適なろ過システムとメンテ」を6月にブログ公開中・・・外部ろ過システムの発展形として公開しました。 参照ください。
⇒ ※小型水槽に最適なろ過システムとメンテ